どうも、管理人のまーちゃんです。
今回は会計力に関する記事の第3弾。
第3弾では貸借対照表(B/S)について詳しくお話ししていこうと思います。
ちなみに前回の損益計算書(P/L)についての記事はこちら。
日本の会計基準は、企業の経営成績を損益計算書上での純利益金額を重視して考慮する傾向があります。
それに対して、国際的な会計基準では総資産に対する純資産額の割合がどれだけあるかによって、企業の経営状態を計測するのが主流となっています。
また国際会計基準では、固定資産は毎年経済的価値を測定し、それに基づいた帳簿価額を算出し計上する方法を採っています。
日本基準の取得価額に基づく減価償却方式とは異なります。
少々難しい話ですが、「企業の経済状況を計る際に、貸借対照法を用いる方法もある」ぐらいに認識していればいいと思います。
今回は、貸借対照表に記載されている内容についてと、どのような判断基準で考察を行っていくか、記していきたいと思います。
貸借対照法の構成要素
1.資産
資産とは、その名の通り「資産」と呼ばれるものです。
現金や銀行口座内にある預金はもちろん、売掛金や立替金など、一年以内にその金額が変化するような資産を「流動資産」、車両や機械装置、また株式などの有価証券などすぐには金額が変化しない資産を「固定資産」といいます。
資産は【持っているもの】と捉えた方がわかりやすいかもしれませんね。
持っているものの価値を金額に直したときに、これだけの金額相当分を法人あるいは個人が持っていると認識しましょう。
ちなみに「債権」という言葉がありますが、これは資産に対した行為を請求できる権利という意味で、基本的には資金を回収できる権利という意味で用いられます。
債権は資金回収の権利という意味で、資産に該当すると考えて良いでしょう。
2.負債
負債とは、資産に対応した「借り」の事を指します。
あるものやサービスを得た結果、発生した負わなければならない義務のことです。
基本的には金銭の支払いを負わなければならない責務、ということで「債務」という言葉と同意義で扱われます。
買掛金や未払金など、一年以内にその金額が変化する負債を「流動負債」、それ以外を「固定負債」と呼びます。
よって負債は【支払義務】の金額相当分、と捉えて良いでしょう。
3.純資産
純資産とは、資産と負債の差額です。
簡単に言うと、「元手の金額」。
法人設立時の資本金や、経年の利益剰余金額がこれに相当します。
利益剰余金額とは、毎年の利益金額の積立分と考えて良いです。
毎年毎年利益を上げていけば剰余金額が積み上がり、反対に損失を重ねていけば剰余金額は目減りします。
よって、【利益が出る】→【純資産が増える】という構図になります。
反対に、【損失が出る】→【純資産が減る】とも言えるでしょう。
なぜバランスシートと呼ばれているか
貸借対照表は英語でバランスシートと言います。なぜ「バランス」という言葉が使われているかというと、資産と負債・純資産の釣り合いは常に一定で均衡を保っているからです。
会計簿記上、貸借対照表は
資産金額=負債金額+純資産金額
という構図で構成され、作成されています。
全ての資産は債務と元手金額の合計であるとされていますので、バランスが取れているのです。
貸借対照表を見るときは、常にこの式をイメージしていきましょう。
貸借対照表の分析①
押さえておきたいポイント
1.現金預金の金額
現金預金はいわゆる「キャッシュ」と呼ばれ、実質的な現金の支払能力を指す金額です。
企業規模によってその金額は異なりますが、キャッシュが多いほどその法人・個人の支払能力が高いと見られますので、あればあるほど良いものです。
多額の現金預金を保有しているほど、その企業の信頼性が高いと言えるでしょう。
2.売掛金と買掛金の差
売掛金は「債権」、買掛金は「債務」であり、それぞれ近い将来に入金または出金がある金額を指しています。
売掛金が買掛金よりも多ければ、近い将来現金が増えることを表し、反対に買掛金が多ければ近い将来現金が減ることがわかります。
近い将来の現金の増減予測を見るのに、この両者を比較しましょう。
3.流動資産と流動負債の差
売掛金と買掛金の差を見るように、流動資産と流動負債の差を見ることも重要です。
売掛金・買掛金がいわば本業での現金増減を予測する指標ですが、更に範囲を広げて本業以外の企業活動における現金増減を流動資産・流動負債を比較して分析します。
4.固定資産と固定負債の科目
貸借対照表を見る時、固定資産・固定負債には何の科目がありどれだけの金額が計上されているか、必ずチェックしていきましょう。
固定資産の科目には機械装置、車両、工具器具などの有形固定資産から、有価証券、保証金、会員権などの無形固定資産があり、また固定負債には長期借入金、リース債務などの科目が計上されます。
製造業であれば、たくさんの機械装置を所有しているけれども、その分購入費用となった借入金も多い、ということも考えられますよね。
あくまで貸借対照表上では金額しか判明しませんが、それぞれの科目には相関関係があるので、推測・推察するためにも欠かさずチェックしましょう。
5.様々な指標(自己資本比率など)
企業の成長度合を見る指標はいくつかあります。
ここでは箇条書きでご紹介しますが、気になればぜひ皆さんで調べてみて下さい。
・自己資本比率
【自己資本比率=純資産÷総資産×100】
高ければ高いほど、資産内の純資産の比率が高くなり、成長していると判断できる。
・流動比率
【流動資産÷流動負債×100】
高ければ高いほど、短期的な支払能力が高いと判断できる。
・負債比率
【負債÷純資産×100】
低ければ低いほど、負債の返済能力が高いと判断でき、中長期的な安全性を測れる。
・総資産当期利益率(ROA)
【当期利益÷総資産×100】
全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出せたかを測る指標。
高ければ高いほど、収益性が高く効率よく収益を上げていると判断できる。
・株主資本当期利益率(ROE)
【当期利益÷純資産×100】
自己資本をどれだけ使って利益を生み出せたかを測る指標。
高ければ高いほど、投資金額に対して効率よく収益を上げていると判断できる。
貸借対照表の分析②
・比較分析を行う
貸借対照表の分析は、単年度だけの分析では行き詰まってしまいます。
損益計算書と同じく、過去の財務諸表を見比べて比較分析をすることによって、より多くの情報を得られ、財務状況・経営状況を把握・推察することが出来ます。
比較分析とは、増減の比較です。
現金一つにとっても、前期・前々期から比較した際になぜ増えたのか、なぜ減ったのか、必ずその要因が財務諸表内に記載されていますので、その要因を突き止めていき、より多くの実態を掴むことを忘れずに行っていきましょう。
・売掛金・買掛金の回転期間
売掛金と買掛金には「回転期間」なるものが存在します。
回転期間とは、「債権や債務が発生してから、それを解消するまでの期間」のことで、売掛金なら売上計上から売上額が入金されるまでの期間、買掛金なら買掛金発生から支払完了までの期間です。
この回転期間は、一般的に以下の公式で求めることが出来ます。
【売掛債権回転期間=365日÷(売上高÷売掛金残高)】
【買掛債務回転期間=365日÷(売上原価÷買掛金残高)】
この回転期間を求めると何が把握できるかというと、企業の財政事情をもろに掴むことが出来ます。
例えば、債権の回転期間が債務よりも早ければ、常にキャッシュが豊富にある状態で支払いが出来るということになり、その反対に債権の回転期間が遅ければ、買掛金は先払いになります。
個人レベルでも先払いというのはキツイ状況になるのに、ましてや法人レベルになると現金がショート(不渡り)になる可能性も浮上するので、支払能力の測定に多大な影響を与えます。
一般的にはどの企業も売掛の回転期間を短く、買掛の回転期間を長く取ろうと行動するので、このバランスが崩れている企業は要注意だと言えます。
・残高合計試算表を見る
金融機関の担当者が、企業に対して「残高合計試算表」を見せて欲しいというケースが度々あります。
「残高合計試算表」とは、ある期間内で取引した金額の増減額とその残高を表示した財務諸表になります。
会計と簿記の知識がないと読み解くのは難しいですが、1ヶ月なら月間、1年分なら年間分の増減額を全て把握できるので、分析に使うならこちらのほうが向いている資料です。
一般的には金融機関の担当者にしか渡さない資料ですが、もし与信調査などで他社の残高試算表を手に入れられる機会があれば、是非とも欲しい資料。
なかなか他社の試算表を見る機会はないと思いますが、もしゲットできたならばこれ幸い、ということで最大限に活用しましょう。
以上、今回は貸借対照表の見方についてお話ししてきました。
前回の損益計算書と同様に、貸借対照表も比較分析が非常に重要です。
分析は慣れるのが一番。
とにかくたくさんの財務諸表を見て、何べんも比較分析をして、力をつけていけばどんどん分析のレベルを上げていけるでしょう。
最初は非常に大変な作業ですが、根気よく続けて会計力と分析力を磨き、自分のスキルを向上させていって下さい!
今後も会計力向上のためのコラム的記事をアップしていきますので、どうぞ宜しくお願い致します!